批判的思考(クリティカルシンキング)の本質と基本的な使い方


批判的思考

石川啄木が「I LOVE YOU」を弟子に訳すとき、「月が綺麗ですねとでも言っておけ」と言ったのは、もはや名言ではなく伝説。それは、愛していることを伝えるのに、「愛」という言葉を使わずとも伝わる言葉はある、ということだった。


批判的思考とは


批判的思考とは、「自分を生きるための思考技術」として、論理的思考の前提を適正に疑うことで本質を見極め、論理的思考では不十分だった解から最適解を導き出し、自分の目標を定め、その目標を戦略的に「結果を出すためのツール」です。

一言で言えば、次のようになります。 昔は、言われたことをちゃんとできる人が求められていたけど、今は言われたこと以上が出来る人が求めれる時代である。その言われたこと以上ができる人というのは、「自分の頭で考え、最適解を出すことができる人」であり、自分の頭で考えるときに使う思考技術のひとつが、批判的思考(クリティカルシンキング)です。

いろいろなところで今年は二極化すると言われていますが、それが仮に「明暗が分かれる」ということであれば、必要とされる人は後者であるということです。

楽しい人はさらに楽しく、苦しい人はさらに苦しくなる、というのも二極化でしょう。 批判的思考で1番最初にやるべきことが、「前提を疑う」という取り組み、つまり、論点(目的・前提)を変えて考え直してみる、という「行為」です。

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行為ですから、答案用紙に答えを埋めていくものではなく、自分自身がどこに疑問を持つかで結論が変わってきます。

それは、言い換えれば、ただ考えるだけでなく、多角的に考える、疑問を持って考える、という「思考態度」のことです。

ここで「疑う」ということをネガティブなイメージに捉えている人は、批判を「非難」と勘違いしている可能性を疑って見るということになります。

「批判」は、誤りを指摘し、改善することですが、「非難」は、誤りを責めることです。つまり、反対する本当の目的(一番得たいもの)が違うということです。


反対する本当の目的(一番得たいもの)を論理的に言うならば、多くの場合、ジャッジ、つまり、勝ち負けの「勝ち」が欲しいと思っていると、「否定」は批判に聞こえるものです。



一番欲しいものが「勝ち」であれば、恋人と仲を深めたいことも、業績を伸ばしたいことも、収入を増やしたいことも、一番ではないということになります。



相手に勝てば恋人との仲が深まるのでしょうか?


否定された相手に勝てば、業績が上がるのでしょうか?


収入が増えるのでしょうか?


そもそも、勝たなければ何が問題になるのでしょう?


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言い負かすことが目的にあれば、それは、批判ではなく「非難」です。

批判と非難を見極める方法



それは、「自分がどう思ったか?」です。 それも「一番最初どう思ったか?」です。

批判の前提が、「反対されることは非難されることである」といったような思考に誤りがあれば、行動も間違うため、当然、望まない結果を繰り返します。

批判的思考は、自分の最適解で人生を豊かにしていくツールですから、まず、「前提を適正に疑う」ということに取り組まなければなりません。

自分の目標を定め、その目標を戦略的に達成するために身につけていくことが、批判的思考の目的だからです。

行動が思考にあらわれるのではなくて、思考が行動にあらわれるので、物事がうまくいかない原因のほとんどが、論理的に思考できないことが根源だとわかると思います。

田舎で店を開くのは無理だ。 (田舎で成功している事業はあります)

胃が悪いのは食べすぎだからだ。 (膵臓が悪いと胃が痛くなります)

頭が痛いのは肩が凝っているからだ。 (噛み癖が原因で頭痛になることがあります)

連絡がないからフラれる。 (忙しいときは連絡できません)

金持ちだから外車に乗れる。 (借金して買う人もいます)

いい会社にいる人は給料が高い。 (給料が安いいい会社があります)

大企業にいる人は恵まれている。 (大企業でコミュに悩んでいる人がいます)

あの人は不愛想だから嫌いだ。 (不愛想な人気者がいます)

あの人は優しくないから頼めない。 (違う誰かには優しい人がいます)


人を批判してはいけない (それを言うあなたは批判する人を批判してるよね) ※↑ここに気づけた人はレベル高め。

こういった誤った論理、誤った信念(固定観念)を信じているから現実が失敗するし、あるいは、自分の信念に問題があるということに気づかなければ、問題は解決しません。



たとえば、3回望まない結果になら、こう考えてみてほしいのです。 幸せになれなくても、その考えを信じているのはなぜですか? もしくは、不幸になっても自分のこれまでの考えを変えたくないのはなぜですか? その考えややり方は、幸せよりもほしいものですか?


セールスで成約できないから営業ノウハウを習う人がいました。

なんのためにそのノウハウを覚えているのかを聞いてみると、「営業が苦手だから克服するために学んでいる」と言いました。 ここで前提を疑ってみると、営業が苦手という前提でノウハウを習っているということになります。 つまり、営業ノウハウを習うのは、営業が苦手であることが前提なのです。

目的:苦手克服 手段:習う では、論点を変えてみます。

そもそも営業ノウハウは、誰のためにあるのでしょうか? 顧客のためです。 顧客のためになる商品があることを知らない顧客に「こんないいものがある」ということを知ってもらうための手段が、営業ノウハウなわけです。

目的:顧客に喜んでもらう 手段:顧客に喜んでもらう営業ノウハウを習う

では、また論点を変えてみます。

そもそも営業は何のためにあるのでしょうか? その人はこう言いました。 「売るためにある」と。

目的:売るため 手段:営業(セールス)

しかし、正しくは、営業とは「顧客に喜ばれるためにある」です。

目的:顧客に喜んでもらう 手段:顧客に喜ばれる営業(セールス) つまり、売るために営業をするから売れない、ということです。

営業は、自分が売りたいモノを売るためでも顧客が欲しいモノでもなく、顧客に喜ばれるために顧客にとって必要なモノを提案して「差し上げる」ためにあります。 営業の失敗でよくあるのが、この「売ろうとするから売れない」という現象です。

目的:売ること 手段:売ること ちょっとおかしいことに気付いてきましたか?

売るために売る。 商品は売るためにある。

「人」がいないですよね? 対象が目的の中にいないから売れないのです。

営業の原則は、商品力があれば営業しなくても「買わせてください」と言われることです。

では、商品力とはなんでしょうか? 顧客にとっての「価値」です。 商品ではなく、商品価値です。

商品価値のひとつがブランドです。


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批判の本質とは

不足している「モレ」 重複している「ダブり」 結論に当てはまらない「例外」 別の「可能性」 別の「根拠」 目的との「整合性」

と言った、矛盾点を様々な角度で検証することで、論理を確実なものにするために必要な要素です。

論理的思考と批判的思考の違い

論理は、「Aであれば、Bである」という型になるように「筋の通った結論を考えること」を言います。



「こうだからこうなる、こうなったのはこうだから」などの因果関係をメインに考えて、プロセスからの結論に共感してもらうための「ツール」です。


様々な情報をもとにそれらを整理して分析するという過程の中では、情報が複雑に入り混じった状態が考えられるので、一旦、頭の中にある複雑な情報を整理して分析し、解決策を考えることになります。

その際、論理的に考えることによって因果関係を明らかにします。


例えば、最近彼が冷たくなったのは、他に好きな人が出来たからだ。

これを「AであればBである」に当てはめると、「他に好きな人がいる前提は、自分に冷たいことである」ということになっていることがわかりますよね。 ということは、「冷たくないことが自分を好きでいる根拠」にしているということですが、果たしてこの正しい論理は、自分を幸せにする論理でしょうか?



ということを「疑って見る」という行為が、批判的思考です。

自分が断定している「である」を疑って見ることは大事です。



結論の前提を疑う「ズームアウト」>は、問題の本質が見えてきます。

この場合だったら、他に好きな人がいることが問題なのではなく、自分に冷たい(と思っている)ことが問題なわけです。


こうして本質が見えてくると、なぜ冷たいことが問題なのかに向き合えるということですね。


批判的思考でブラッシュアップされた論理的思考は、自分の気持ちや考えを「相手が理解できる形で表すため」に使っていくと、「どういう前提でこういう状態となっているのか」ということについて把握することができて、具体的な問題解決に向けて思考が進みます。

論理的思考は、あくまで論理的に考えることを指すので、情報を整理して分析する思考法=ツールのことです。

かたや、「AであればBである」という論理的思考の結論「Bである」ことに対して、「本当にそうなのか?」と、適正に疑うのが批判的思考の役割です。



論理的思考を補う役目が批判的思考です。

あらゆる情報を1度客観的に疑うことで、思考過程に間違いがないかを確認することができるということです。

両者の大きな違いは、疑うかどうか?です。

論理的思考が客観的な視点であっても、


さらに精度を上げるために より確実なものにするために よりリスクを回避するために 念には念を入れるために

一度「結論」を疑って見ることで、論理的思考に一層の客観性を加え、補うことができる思考技術ということですね。

特に、すごい人が言ったから、師匠が言ったから、といったような上下で見てしまう人の言葉は、自分のオリジナルにするためにも、探求心を持って「それって自分的にはどの経験が当てはまるんだろう?」と、疑って見ることです。 言われたことしかできない自分が、言われたこと以上できるのは、師の型を守った次に、その型を「破る」ことが必要だから。


そして、自分の経験で師の言葉を上書きしていく、「守破離」です。


論理的思考と批判的思考の使い分け

論理的思考は、自分の頭の整理をする場面、他へ説明を行う場面に使います。 論理的思考の目的は、他者を理解し、自分を理解してもらうためにあります。 納得をもって共感してもらう目的で論理的に説明するということです。



批判的思考は、自分の頭の整理したものを他者へ説明する前に、客観性を加える目的で行う「相手に理解される自分のために行う行為」です。


そのため、両者を分けて考えるより、組み合わせて考えることが効果的です。


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まとめ

1.批判的思考とは


言い負かすといったような「勝ち負け」を判定するものではなく、自分のこれまでの考え方や習慣、他者や情報に流されずに「言われたこと以上のことを自分で考えて導く最適解を出すための思考態度」です。

非難することではなく、自分の頭の整理したものを他者へ説明する前に行う「相手に理解される自分のために行う行為」です。 重要な情報かそうでない情報かを取捨選択し、その上で「正しく思考できる能力」が向上します。


その能力が向上すると心理的側面に強くアプローチするようになるので、自分に対する姿勢、内省といったメンタルからのマインドセット(捉え方・見方)が変化していきます。

2.論理的思考と批判的思考の違い ・論理的思考:筋の通った結論を考えること ・批判的思考:結論に筋が通ってるか疑うこと


※2つは切り離さず、組み合わせて使うこと。



3.批判とは、前提を疑うことで手段の目的化を防ぐことができる 【誤】売る目的の手段は営業

営業の前提は売る行為

【正】顧客を助ける目的の手段が営業

助けた結果が利益・営業の前提は顧客満足


よって、売り上げは利益を上げるためのひとつの手段

つまり、売上を上げても利益が出ないことは多い。



4.批判的思考の本質

・不足している「モレ」 ・重複している「ダブり」 ・結論に当てはまらない「例外」 ・別の「可能性」 ・別の「根拠」 ・目的との「整合性」


5.批判的思考に必要なマインド

・問いをたてる姿勢 ・問題を定義する姿勢 ・根拠を検討する姿勢 ・バイアスや前提を分析する姿勢 ・感情的な推論(私がそう感じるから真実である)を避ける姿勢 ・過度の単純化はしない姿勢 ・他の解釈を考慮する姿勢 ・不確実さに堪える(耐える)姿勢


6.批判的思考が応用できると・・・

AであればBである。

ということは・・・?

Aに似ているCもBではないか?


といった「別の似ている事例から結果を推測する力(アナロジー)」が身につくので、イノベーションや業界の常識をひっくり返すような戦略もできるようになる可能性も高まります。

アナロジーの代表と言えば、松下幸之助の「水道哲学」ですね。 事実 A:水道水は大量に安く供給されるので B:誰の手にも行き渡って人々を幸せにする 仮説 C:産業製品も大量に安く供給することで B:誰の手にも行き渡って人々を幸せにする


では、実際、どういった問題に、批判的思考をうやって使っていくのが、私のクライアントさんたちのノンフィクションを見ていきましょう。



ヤマモトマユミ

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