問題の本質を捉え解決策を導く演繹法(えんえきほう)


批判的思考の3ステップ


演繹法(Deductive Approach)は、ここではその発展型となる三段論法で解説します。


①Aであれば、Bである。 ②Bであれば、Cである。
よって、 ③Aであれば、Cである。

といった「論理を積み重ねることで結論に達する考え方」が三段論法です。 別の言い方をすると、


大前提 結論 経験(事象)

例えてみましょう。

私がマーケティング講義で価値観について話したとき、「あなたにとって誠実とは?」と聞いて、「嘘をつかない」、もしくは「正直な様」と答える人が6割以上いました。

そもそも「大前提」というのは、社会で働く誰もが認知していて当然のことを指すので、この場合の大前提は、「誠実」の原義になります。

つまり、「誠実とは、まじめで真心があること」が原義(もともとの意味)です。 その人が自分の事象を通した結論として「嘘をつかないこと、正直であること」と思っているということですね。経験から思っているということです。

嘘をつかないことや正直なことが、「まじめで真心がある」ということだと信じているということです。


大前提:まじめで真心があること 結論:誠実 経験(事象):嘘をつかない、正直なこと(前提)

そう思っているその人は、「私の理想の人は誠実な人です」と言いました。


つまり、その人にとって、嘘をつかない(正直な)人が誠実であり理想だということです。 さらに、ここでもうひとつ重要なことは、自分の思う「誠実」が、相手と同じとは限らないということです。


ほとんどの場合、「大前提」の認識違いによって結論は違ってくるので、コミュニケーションロスが起こり、問題の種が育っていきます。

上記でもわかるように、「誠実」の大前提(原義)は、「正直」とは違いますよね。

ズームイン・ズームアウトでも説明しましたが、まず、答えを出す前に「結論の前提」を疑って見てほしいのです。


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ズームイン・ズームアウトで、「いや、待て。そもそも誠実ってなんだろう?」と、疑って見るだけで、予測される問題は回避できることは多くなります。 そして、疑うことができたら、調べることができますよね。

調べたら、また「疑う」・・・これを繰り返していくと、自分はどういった考えで、どんな結果を繰り返してきているのかが自然に見えてきます。

相手と自分の見解の相違を防ぐ一番簡単な方法は、至ってシンプルです。


「私が思う誠実とは、これこれこういうことです」と、「誠実」と言う名詞を動詞にすることです。


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演繹法では、A大前提、B結論、C経験(事象)の各部分の論理が正しければ結論も正しいことになります。

つまり、先ほど言った、


①Aであれば、Bである。

②Bであれば、Cである。

よって、③Aであれば、Cである。


の型にはめると、


まじめで真心があるならば、誠実であるということである。 誠実であるならば、嘘をつかない(正直)ということである。 よって、まじめで真心があるならば、嘘をつかない(正直)ということである。

ここで、演繹法の見るべき大事な点は、①②③の1ヶ所でも論理に誤りがあると、正しい結論が導かれません。

上に示した例では「まじめで真心がある→誠実」という結論に達しています。 実際、誠実の原義は、このまんまです。 しかし、100%ではありません。 まじめで真心があるのに、誠実ではない場合には、論理の一部が成り立っていないということです。

確かに、まじめで真心があるのに、誠実ではないと思う人は、ゼロとは言えません。


本人はそう思っていても、相手がそう思わないのであれば成立しないですよね。

演繹法の考え方をマスターすれば、想定外の結論に達した際、想定外となった理由を把握しやすくなります。

たとえば、何をもってまじめというのか、また、「真心」の大前提の解釈が相手と違うなどの場合は、当然、コミュニケーションロスが発生しますよね。

特にブランディングやマーケティングを使いこなすためには、「理想の人(ペルソナ)」を完全一致しておかなければ、映画が好きだからホラー映画を勧めたら、サスペンスが好きだった等といった結末になりやすいのです。


「映画が好き」という前提だけでは、結論が不十分だということです。


大前提を仮設し、結論の前提を変えるという作業がコミュニケーションロスを防止します。



ビジネスで演繹法を例えてみましょう

値段が高いから下げてくれ、と言われたとします。 この場合、大前提が何なのかで、結論は当然変わってきます。

前提が、「予算が限られている」とか、「相場より高いから」であるならば、当然「下げる」という結論になるでしょう。

しかし、大前提は、なんでしょうか? 大前提の情報が不十分ですよね? 「下げてくれ」と言う限り、「買う事」が前提にあるのではないでしょうか?(仮説) 仮にここで「買う事」を大前提にするなら、

①大前提:買う事 ②結論:値段を下げる ③経験(事象):予算に限りがある、相場より高い(前提)

という三段論法が成立します。



買うならば、下げる。 下げるならば、予算に限界がある(相場より高い)。 よって、買うならば、予算に限りがある(相場より高い)。

ですが、演繹法は、すでに知られている「一般論」をベースに仮説(=結論)を立てる方法のため、どの一般論を使うかによって、立てる仮説(=結論)の内容も大きく変わります。

たとえば、

①大前提:買う事 ②結論:下げる→ほしい ③経験:予算に限りがある、相場より高い(前提)

といったように、②結論を「ほしい」に変えてみます。



高いか安いかではなく、欲しいか欲しくないかという結論で推論を立てる根拠は、人の行動心理として、本当に欲しいなら高くても買うというのがあるためです。



つまり、人間は、高いから買わない、安いから買うのではなく、全体像である概念に共感するから買うという行動になるということです。


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相手は買う前提で「下げる」という結論を出している仮説で、結論の前提「限界・高い」を疑ってみるのです。


大前提を変えることで他も変えていかないと、当然、ABCは一貫しません。



大前提が「高くてもほしい」のであればどうするか?

さらに仮説を立てます。


①買うのであれば、高くても欲しいということである。 ②高くても欲しいのであれば、予算や相場は優先されない。 ③よって、買うのであれば、予算や相場は優先されない。

すると結論は、他の予算を下げる、分割にする等、思考が拡大します。 他の予算を下げる、分割にする前提であれば、「値下げしない」ことが前提に変わるということです。



つまり、高いか安いではなく、欲しいか欲しくないか、という視点に変わるということですね。


①大前提:買う事 ②結論:高くてもほしい(前提) ③経験(事象):他の支出を抑える、何かをやめる、分割にする、収入源を増やす、満足を増やす、幸福感を増やす


ここで、③も思考が拡大されて視点も広がりやすくなります。


顧客は得をしたいのではなく、損をしたくないのです。


人間は、自分は行動しないで、自分以外を変えようとするために思考が広がらないのですが、思考を広げるためには自ら行動するということが前提になります。



ここで間違いやすいのは、「売る行為」です。 飛び込み営業がそのいい例だと思います。 売り込みという行動を「自分で動いている」と思うのは間違いじゃないのですが、自分が動いている目的(狙い)が、意識していることとズレていないか?という点にフォーカスしないといけません。



特に高額商品であればあるほど、売ることより体験してもらうことを考える方が結果として買ってもらいやすくなるのですが、「早く売りたい」というようなエゴから、体験してもらう手間を省いて売ろうとしてしまいやすいので、売れない確率の方が高くなるのです。


本来「楽」をするより「楽しんでもらうこと」を考えた方が勝つんですけどね。



では、大前提が「高くてもほしい」とするなら、商品に何が必要でしょうか?



高くてもほしいと思ってもらえるのは、どんな商品でしょうか?


それが「商品力」。つまり、魅力です。



営業力でもあなたの性格でもなく、商品の魅力です。


どんなに優れた商品であっても、相手がそれに納得するだけは売れないのです。


相手が動かすためには「共感」から沸き起こる内的衝動がなければ売れません。


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前提が変われば結論は当然変わります



ここまで来たら、やっと問題の本質が、「いくら値引きするか?」ではなく、「高くてもほしいと思ってもらえるにはどうするか?」ということだとわかります。



そのために話し合う、構成する、実行する、検討する、改善する、また実行する・・・というPCDAを経て、目標に近づいていきます。

この「大前提:高くてもほしい」という代表的な例が「不動産」です。

月10万くらいのところを求めて数件見せてもらったら、だいたい最後の物件をほしいと思う人は多いです。


お試し→お試し→購入という流れですね。

そして、最後はだいたい10万以上の物件が多いのは、みなさんがよく知っていると思います。わかっていても、納得するんですね。だって、いい現物を見たら欲しくなるのが人間だからです。



演繹法だけでは不十分な理由


こうして、論理がどう展開されるのかを考える習慣をつけておくことを、演繹法は教えてくれます。

場数を踏んでいくと相手が気づかない矛盾も先に気づけるので、妥協ではなく譲歩が実現しやすいです。

しかし、演繹法だけでは、まだ論理的思考は不十分だと言えます。 なぜなら、演繹法は、結論(一般論)に対して「どんな出来事が起こるか?」を推論で導くので、根拠となる仮説データーが足りません。

それを埋めてくれるのが、次に説明する「帰納法」です。


帰納法は、過去のデーター(事実)から、繰り返し起きている共通の出来事を通して、繰り返すパターンを知る方法です。


つまり、演繹法は帰納法と組み合わせて論理展開していくと、より蓋然性(がいぜんせい=正確なことをより確実にする事)が高まるので、説得力が違うし「尊敬」も増えます。

論理的思考のゴールが理解されることであるなら、断れない理由を生むということですね。 これから説明する帰納法は、根拠から「繰り返しているパターン」を推測していくので、演繹法の逆から論理展開していきます。



演繹法:一般論を使って出来事の結果を推測する 帰納法:複数の出来事とその結果から規則性を見つける

では、帰納法に進んでいきましょう。





ヤマモトマユミ

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